〇佐藤先生「1単位分あげるよ」
こうして、実習が始まって2週間ほどは午前中にBさんの歩行練習を行ったり、佐藤先生の外来患者の見学などを行っていました。午後からは、もう一人の実習指導者である加藤先生についていき、担当患者であるCさんの評価や患者さんの見学を行っていました。
評価実習は3週間で終了なので、最後の1週間、私は学べるだけ学んで帰ろうと思って臨みました。そんな実習最後の週は、私にとって貴重な経験やうれしい言葉をもらった大切な思い出です。
それは、加藤先生がお休みだった金曜日の話です。普段なら、午後は加藤先生と行動するのですがお休みなので、佐藤先生に見学についていました。見学を行った、ある患者さんとの出来事です。その患者さんは、佐藤先生も初めて介入する患者さんでした。
佐藤「こんにちはー、本日リハビリ担当させていただきます。佐藤といいます。よろしくお願いします。」
患者「あーそうなのね。よろしく」
佐藤「学生さんを見学させていただいてもよろしいですか?」
患者「いいよー。若い子がおると元気が出るよ。」
ひろ「ありがとうございます。専門学校から来ました、ひろといいます。よろしくお願いします。」
患者「よろしくね。あなたはどこ出身?私ね、あそこから来よるんやけどetc.....」
話し始めたら本当に止められなくて、ずっと喋る患者さんでリハビリもあまり集中されず、なかなか進まず時間だけが経ってしまいました。話を傾聴していると、気に入っていただけたのか私に向かって話されている時間が多くなり、リハビリ終了の時間が訪れ、佐藤先生と私は退室しました。
リハビリ終了後、手を清潔にするため消毒と手洗いを行っていました。その時に、佐藤先生からこんなことを言われました。
佐藤「いやーなかなか、運動できずに終わってしまったー。話が止まらなくてどこで話を切り上げようか迷ったよ。」
ひろ「そうですね。傾聴する時間がながかったですね。」
佐藤「ひろくん。患者さんに気に入られたかもね(笑)ずっと、ひろくんに話しかけてたから。」
ひろ「そうかもしれないです。」
佐藤「そんなひろくんにお願いがあります。」
ひろ「はい。なんですか?」
佐藤「もう一度あの患者さんのところに行ってリハビリしてきてください。1単位分あげるから好きに使っていいよ(笑)」
ひろ「はい?」
みなさん、この言葉の意味わかりしたか?患者さんに1単位分治療してきていいよってことなのですが、こんなこと普通ならありえません(笑)なぜなら、資格を持っていない学生が患者さんに治療するという行為は法律的に認められていないからです。あくまで実習指導者の監視下のもとで行うこととされています。
ひろ「そんなことしていいんですか?」
佐藤「大丈夫、大丈夫(笑)あの患者さんと同じ部屋の人にリハビリ入るから、一応近くにいるから。」
ひろ「それならわかりました。」
佐藤「さっきあんまり運動できていないからさ。運動してくれると助かる。ちゃんとやった内容はあとで報告してねー。」
ひろ「はい。わかりました。」
そんな運びとなり、また患者さんのもとへ。
ひろ「失礼します。先ほどは見学ありがとうございました。」
患者「あら、またきたの(笑)」
ひろ「はい(笑)さきほど、ほとんど運動できなかったので一緒に運動していただけないかお誘いに来ました。」
患者「そういうことならやります。さっきは反省。ごめんね本当に(笑)」
ひろ「それでは準備運動から始めていきましょうか。」
といった流れでリハビリを行いました。リハビリが終了した後、内容を佐藤先生に報告。
佐藤「ありがとう。緊張した?(笑)」
ひろ「もうドキドキでした。」
佐藤「働き始めるとあれが普通だから。この時期に経験できてよかったね(笑)」
もう時効だと思いますので書いていますが、今ではやってはいけないことですし、たぶん問題になります(笑)それでも、こんな貴重な機会を与えてくれた佐藤先生には本当に感謝しています。
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