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学生時代のリアル~見学実習編③~

〇ここになにをしにきたの?


午前中が終わり、昼食を食べてからはCVの患者見学をすることになりました。「私、人見知りするからなぁ」といった話を同僚にされていたのですが、私も人見知りするところがあり、緊張する場面ならなおさらうまくしゃべれないところがあります。

 しかし、CVの先生はおなじ学校の卒業生でした。そのため、共通の話題もあり少しは緊張がほぐれていました。

 患者の見学が終了した後は先生にわからないことを質問したり、次の患者さんの情報を聞いて見学に備えていきます。

 しかし、私は実習が初めてなうえに、成績がすごくいいわけでもなかったので、先生たちがリハビリ中何をしているのかもわかりませんでした。また、患者さんを初めて近くで見ていたことですごく緊張していました。

 

 CV「なんか質問ある?」

 ひろ「いえ、とくにはないです。患者さんを目の前にして緊張していました。」

 CV「まぁ、そうだよねー。初日やし、ゆっくり慣れていこうねー。」

 ひろ「はい。ありがとうございます。」

 CV「課題はなにがあるの?」

 ひろ「実習地で理学療法士にインタビューすることと習った評価を実際の患者さんに行ってみるという課題が出ています。」


 私たちの見学実習では、理学療法士の先生たちにインタビューを行い、理学療法士の仕事の楽しさややりがいなどをレポートにまとめるという課題がありました。また、1年生の時に理学療法士が日常的によく使う評価である関節可動域(ROM)、筋力評価(MMT)を学習するので、実際の患者さんで計測できるようになろうといった課題が出ていました。


 CV「なるほどね。インタビューは空き時間でしようか。とりあえず、評価やってみようか。」

 ひろ「はい。わかりました。」


 次の患者さんに自分がやってきたことを行う。しかも、先生たちにみられながら……。私の緊張はピークに達していました。


 CV「Aさん、学生が実習できているんですが、少し評価をさせてもらっていいですか?」

 Aさん「うん、いいよ。」

 ひろ「ありがとうございます。では、Aさんの肩や股関節がどれぐらい動くかを測らせていただきます。」

 Aさん「学生さんもたいへんやねー。」

 ひろ「お気遣いありがとうございます。」


 すこしコミュニケーションをとりながら、なるだけすばやく評価を終了しました。評価が遅いとそれだけ患者さんにストレスを与えてしまいます。


 ひろ「ありがとうございます。無事に計測終了しました。ご協力ありがとうございました。」

 Aさん「いえいえー、がんばってね。」

 ひろ「ありがとうございます。がんばります。」


 評価が終了し、緊張がすこし和らいでほっとしていた私ですが、CVは怒りの表情でした。


 CV「あなたさ、自分がやりたいことやって終わったらそこで役目が終わりなの?」

 ひろ「え?」

 CV「評価した後は、評価の結果を伝えて、どうだったのかフィードバックするのが仕事でしょ?」


 そうなんです。リハビリ職は、評価や治療を行ったら患者さんに結果の説明を行う必要があります。評価を行った意図や結果から、どんなことが言えるのかを伝えるまでが評価や治療と言えます。


 CV「緊張しているからといって、自分のやることだけやって終了して、あんたここになにをしにきたの?」

 ひろ「……」


 ぐうの音もでませんでした。

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